講座2日目「相続について」

相続について

 戦前の相続は、家督相続といいまして、長男がその家の財産すべてを相続することにより、先祖代々の家を守ってきました。女の子しか生まれなかったり子供がいない家は養子(男)を迎え、養子がすべての財産を相続して、家を代々存続してきました。そのため家(○○家)は絶えることはありませんでした。前回話した墓じまいは必要ありませんでした。

 戦後は民法が改正され血縁関係のある人が、法定相続人となっています。ただし夫婦には血縁関係はありません。

 相続で一番多いケースとして、夫婦のどちらかが亡くなって、配偶者と子供が相続する場合、配偶者が二分の一、子供が二分の一となります。子供が二人

おれば、二分の一の二分の一となり、子供は一人四分の一となります。

 夫婦に子供がいない場合は、例えば旦那が亡くなった場合、妻が三分の2、旦那の親が生きていた場合は親が三分の一の相続権が発生します。親が亡くなっていて旦那の兄弟がいる場合は、妻が四分の三、兄弟が四分の一の権利が発生します。兄弟が亡くなって子供がいる場合、代襲相続として子供に権利が発生しますが、子供が亡くなった時点で、その権利は消滅します。

 最近、よく聞く言葉に遺留分というものがあります。例えば旦那さんが亡くなって、公正証書や、遺言書で全額を市に寄付をしますと書いてある場合、妻、子供にも財産が行き渡りません。そうした場合妻や子供の生活が成り立たない可能性があります。そうした場合には法定相続分の半分が遺留分として確保するのが可能です。可能ということであり放置しておけば権利が消滅します。この権利を確保するには、被相続人(旦那)が亡くなってから、一年以内に家庭裁判所に遺留分滅失請求を申し出しなければ権利はなくなります。この遺留分は親兄弟にはありません。

 逆に、被相続人に借金等が多くあり、相続することにより、相続をしないほうが良い場合があります。そうした場合には被相続人が、亡くなったのを知ってから、三か月以内に家庭裁判所に相続放棄の手続を行ってください。行わないと自動的に相続をしたことになってしまいます。

 相続の中で一番優先度の高いのは公正証書、遺言書です。公正証書は西尾では西尾駅の北にあるパチンコマルマンの二階に公証役場があります。ここで公正証書を作ると少なくて10万円程度かかります。

 遺言書ですが、これは本人が直筆で書くことが求められます。それに日付を記載しなければなりません。これは遺言書が何枚かあった場合、日付の新しいのを優先するからです。印鑑も必要ですが認めでいいです。最近の行政改革で印鑑はいらなくなるかもしれません。遺言書はすべてが直筆ではなく財産目録はパソコン等で作ってもよいことになりました。

 昨年の7月10日から、法務局が遺言書を3,900円で預かってくれるようになりました。詳細については法務局に確認してください。

 法定相続人がいない(身寄りがない)方、遺言書もない場合財産、財産は民法では国のものになってしまいます。国は日本人約1億2千万人の財産は管理できないので、実際には放置されたままとなります。これが最近増えている空き家になってしまいます。

 ただし、特別縁故者という制度があります。この制度は別添資料としてあります。中身は相続する権利がない方が相続できることが書いてあります。

 相続の割合は、法定相続の割合でお話をさせていただきましたが、現実には遺産分割協議書で相続の中身を決定すればよいです。

 相続で忘れやすいのが、農協の積立式共済があります。昔は農協に申請すればすぐに名義変更をしてくれましたが、現在、亡くなってから名義変更をしようとすると遺産分割協議書が必要となります。生きているうちに名義変更をするのが良いと思います。

 もう一つ、忘れられているのが祭祀財産です。仏壇は建物の中にあり忘れられないですが、忘れられやすいのがお墓です。墓地の所有権が、地方公共団体で管理を地元の町内会が行っているところでは、墓石が設置してある場所が利用できる形になっています。新たにお墓を設置する場合は、町内会長の許可を受ければよいとなっているところが多いです。実際にお墓は登記等の手続はしてありません。このことから、お墓を管理する人がいなくなれば、無縁仏としてだれも手が出せなくなるのが現実です。前回お話ししたみたいに戦前は、家、お墓も長男(跡取り)がすべてを相続するとともに管理もしていましたが現代では、長男は東京等の遠くに就職して帰って来なかったり、女の子は旦那の姓を名乗り嫁ぎ先にお墓があると実家のお墓の管理をしなくなってきます。孫ぐらいまでは祖父、祖母の顔を知っているのでお墓参りをしますが、ひ孫になるとお墓参りをすることはほぼなくなってしみます。ですからお墓の場所すら知らなくなってしまいます。こうした状態になりますと、お墓の存在が忘れられてしまいます。

 こうした状態を防ぐには相続でお墓の管理者を決めて書類等で残すか、現在生きている人で墓じまいを行うのが良いと考えています。

 相続が発生することによって相続税を支払う人も多く見えます。

課税対象の遺産総額税率控除額
1,000万円以下10%
3,000万円以下15%50万円
5,000万円以下20%200万円
1億円以下30%700万円
2億円以下40%1,700万円
3億円以下45%2,700万円
6億円以下50%4,200万円
6億円超55%7,200万円

相続税の税率の表を皆さんに配布しましたが、これは基礎控除を除いた部分についての金額であって、遺産総額に対してではありません。

基礎控除は、3,000万円+法定相続人×600万円です。(平成27年以降)

その他に

【配偶者の税額軽減】 被相続人の配偶者の課税価格が1億 6,000 万円までか、配偶者の法定相続分相当額 までであれば、配偶者に相続税はかかりません。

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