講座1日目 「墓じまい」

 (墓じまい)という言葉を最近よく耳にします。この語源は最近マスコミが作った言葉です。皆さんの中でパソコンを使われる方で、ワードで墓じまいと入力してくださると(じまい)の下に赤の波線が出てきます。パソコンではいまだに理解できない言葉となっています。

 戦前は、家督相続制度があり、長男がすべての財産を相続する、権利がありました。男の子がいない場合とか子供がいない場合は、養子を迎えすべての財産を養子が相続をすることができました。これを行うことにより、○○家を存続することができました。すべての財産の中には、祭祀財産(お墓、仏壇など)も含まれます。

 私たちが子供のころは、男の子(長男)が生まれると跡取りが生まれたと言って家族みんなで喜んでくれました。最近はどちらが生まれたと聞かれるようになり男の子、女の子との返事をするようになり、跡取りが生まれたとは言わなくなってきました。跡取りという言葉を使用する人は、年齢を重ねた方が多いように思われます。

 戦後、日本の民法が改正され、相続権が配偶者、子供を優先するようになりました。例えば、親が亡くなった場合、子供には相続する権利が発しします。子供は男、女、長男、次男等により差はありません。最近、女の子が結婚して名字が変わることが多いです。現在の法律では夫婦どちらの姓を名乗ってもよいのですが、男の姓を名乗るほうが多いです。最近は、男も女も結婚すると親と別居する方が多く見えます。こうしたケースが多くみられるようになり、親が亡くなった時点で、土地は相続されるが、お墓はどこにあるのか解らなかったり遠くに就職したりして、お参りに来なくなることが多くあります。子供たちはある程度お墓参りをしますが、孫の代になるとお墓があること自体を知らないことが多くあり、無縁仏になることもあります。

 そうしたことをなくすため、最近は自分たちが生きているうちに、先祖をともらって墓じまいをされる方が増えてきました。

 そのほかに、最近結婚しない人が多く見えます。兄弟姉妹のいない方は、親からの財産は相続しますが、自分の財産を相続する人がいないと、土地やお金は遺言とか、公正証書に残しておけば、あとは引き継いでくれます。しかし祭祀財産(お墓、仏壇等)は対象外となってしまうことが多くあります。お墓は放置されたままとなり撤去することも非常に難しくなります。

 こうした戦後の相続制度の改正により、墓じまいという言葉がマスコミによって作られました。

 それでは墓じまいはどうしたらよいのか、知られない方が多く見えると思います。

 最初に、公共の場にある墓地について(お墓の土地所有者が西尾市)

正式には、改葬許可証を市役所市民課に提出します。添付書類として、埋葬されている先祖の戸籍謄本が必要となります。(埋葬されている物故者全員が基本ですが、わかる範囲でよいとのことです。)書類提出時にお骨についての質問があります。お骨がなければ完了となります。お骨がある場合は処理方法について確認があります。お寺にもっていって、永代供養をして頂けるところが最近多くあります。費用としては20万円程度からあります。新たに納骨堂へ納めるのも可能です。現在西尾市には、檀家以外誰でも収めることが可能な納骨堂が二つあります。一色の普元寺と元市民病院の近くの阿弥陀寺です。こうした納骨堂は使用期間が設けられていて、期間が過ぎると永代供養をしていただけます。費用は夫婦で30万程度からですが、毎年の管理費も必要となります。

 お骨の処理方法として、最近テレビで見かける散骨という方法もあります。市役所にはお骨を散骨しますといえば、墓じまいの書類上は完了します。ただし散骨する場合はお骨を粉(粉骨)にしなければなりません。粉骨を業務としている会社はインターネットで検索するとすぐに見つかります。こうした業者は海に散骨する業務等も行っていることが多いので、直接電話等で問い合わせすると、いろいろな手法を教えてくれます。

 墓じまいをするにあたって、依頼するのは生抜き(魂抜き)をするお寺様(基本は檀家の和尚さん、なければ近くのお寺に依頼すれば受けてもらえます。)

あと、石屋さんには墓石の撤去を依頼すれば可能です。(お骨があればお骨の掘り出しもしていただけます。墓石は撤去した後、墓石に掘られた文字がわからないようにして処分をしてくれます。この一連の行為を行うと20万円程度必要となります。

 西尾市が所有する墓地は改葬許可証を提出して、墓じまいが始まりますが、町内が管理するお墓があります。西尾市に確認すると町内会長が了解すれば市は何も言わないそうです。改葬許可証は大部分の方が、未提出のまま墓じまいをしているそうです。お寺にあるお墓は、お寺に依頼して生抜きをして墓じまいをします。石屋さんは、通常は自分で探しますが、お寺と契約している石屋さんもいますので、お寺に確認してください。墓じまい自体が最近行われるようになったもので、お寺によっては離檀料を要求されることがあります。決まりはありませんのでお寺の要求どおりする必要はないと思いますが、ある程度の額は払ったほうがすっきりすると思います。

 墓じまいの話ですが、お墓を作りたいと考えている方もたくさんいます。そうした場合に参考になると思いますのでお話をさせていただきます。お墓を作る場合には、墓石に彫る文字としては、南無阿弥陀仏とか先祖代々にしてください。

なぜかと言いますと、○○家のお墓を作りますと、戦前は家督相続の制度があり家自体が存続されましたが、相続制度が変わり、代々家を守る人が名字も引き継いでくれればよいですが、女の子が生まれ、結婚して夫の姓を名乗った時点で、墓を守るためには墓石を変えなければなりません。例えば先祖代々とすれば、夫婦それぞれの先祖を埋葬しても先祖に違いはありません。

 皆さん家を作るときには、家相を見てもらう人が多くいます。お墓にも墓相というものがあります。お墓を見ると大部分のお墓が三段に積んであります。墓相で見る人は二段といいます。理由として人は土に帰る。お墓の字の下部分にも土という字を書きます。土地という字は漢字の二に縦線を入れて土と読みます。その二から2段となるそうです。実際には何段という決まりはありません。お墓を見ると大部分のお墓が三段に積んであります。これは一段目が土台でその上に2段を積んでいるから墓相のとおりです。また、あまり高い土台を作ると大地震が起きると墓石が倒れることがありますのであまり高くしないほうが良いです。最近お墓の隣に墓誌(祭っている人の名前を石に刻む)を設置する人が多くみられます。墓誌の位置は右か左どちらと考えますか。墓相を占う人は左といいます。理由は右大臣、左大臣どちらが上位と言いますと左大臣が上位です。私たちは先祖がいたから生まれてきました。大事な先祖を敬うことを思うと左に位置すると考えられます。現実を見ると右に多くあります。実際には皆さん先祖を敬う気持ちが大切であり何段積んでもよいし右だ左だの考えなくてもよいと思います。

 余談として皆さんにお話ししておきます。墓じまいをするときお寺さんに生抜き(魂抜き)をしていただきます。生抜き(魂抜き)をしたお墓にお参りをするとまた、魂が戻ってしまうと言われています。生抜き(魂抜き)をした後の墓石は単なる石となります。石屋さんは石に刻んである文字を砕いて処分をしていただけます。先祖伝来の墓石を砕くのは忍びないという方は石をそのまま引き取ってくれるお寺があります。愛知県豊田市にある浄土真宗根引山妙楽寺です。ここはお墓のお墓と言われ墓石をそのまま引き取ってくれます。(テレビ等で見られた方もたくさん見えます。)

 今までお話しさせていただいたのが墓じまいについてです。

 墓じまいをするということは、自分の先祖を消滅させてしまう行為でもありますので。他人に任せるのではなく、自分自身が先祖を敬いながら行うのが基本と考えています。お年を召されて自分ではできない状態であれば、お手伝いをしますが、今生きている方が行うのが基本と考えています。

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